kotsulisのレース編み blog

チクチクレース編みの日々。

守護天使かも知れない

20代の頃の話である。私は毎日ぼろアパートから会社に通い、イラストを描く仕事に追われていた。2、3日徹夜などは当たり前で、食事はコンビニ弁当、アパートへは寝る為だけに帰る、というキツイ生活だった。

当然の事ながら、身体をしょっちゅう壊した。ある時、かなり重い風邪を引き、熱を出してアパートのソファーベッドで寝込んでいた。その時不思議な夢を見た。

私は戦争で酷く荒廃した街に居た。鉛色の空の下、建ち並ぶビルはすすけた色をしている。窓ガラスが割れて、その破片が道路に散らばっていた。道路にはゴミが散乱しており、酷い臭いを放っている。そのごみ溜めの中に蠢く生き物がいた。雌犬である。褐色の毛皮の殆どが、黒っぽく汚れていた。彼女は横たわり、腹を波立たせて荒い息をしている。その乳首に数頭の仔犬がむしゃぶりついて、互いを前足で押し退けながら、乳を吸っていた。その中の一頭が、私だった。
私は何も考えずに、夢中で乳を飲んでいた。

すると、どこからか銃声が聞こえる。また戦闘が始まったのだ。音は段々近付いてきて、とうとう私たちの頭上を銃弾が飛び交い始めた。私は、

「これはマズイ。逃げなくては!」

と、人間の姿になり、勢い向かいのビルの中に駆け込んだ。ビルの中は荒れ果てており、無人だった。見渡すと、吹き抜けのホールから上へ向かって螺旋階段が伸びている。とりあえず高いところへ上ろう、と階段を登り始めた。

私はただ黙々と登り続けた。階段は大人が一人入れるくらいの狭い幅で、気が遠くなる程上空へ続いていた。もうどのくらい登って来たのかも分からない。脚がガクガクしはじめ、

「もう駄目。これ以上は無理」

と座り込んだ。すると突然、何処からともなく小さな男の子が現れて、

「大丈夫。僕が手伝ってあげるから」

と、私のお尻を押すのである。男の子は白い肌に輝く金髪で、緑色の眼をしていた。私は不思議なことに、

「あなたは誰?」

とか、

「何処から現れたの?」

とは思わなかった。

「よし、そういう事なら頑張ってみるか」

と、再び階段を登り始めた。男の子は始めは私のお尻を押していたが、途中から私の脚が少し楽になって来たので、手を繋いで男の子が前を行き、私が後を付いていく形で上った。

とうとう屋上に出た。パッと明るい光が目に飛び込んだ。辺り一面真っ白な雲が絨毯の様に敷き詰められており、何処までも続いていた。上を見上げると、抜けるような青い空が広がって、真ん中に銀色の太陽が輝いている。

「そうか、天上に着いたんだね」

と、嬉しくなったところで目が覚めた。

目が覚めたら、凄い汗をかいており、熱が下がっていた。回復夢とかいうやつだろうが、私はあの男の子は守護天使だと思っている。それにしても、どうして最初が仔犬なのか?(笑)まあ、とても人間らしい生活とは言えなかったからなー。