白い馬の記憶
幼稚園生位の頃。両親に連れられて、とある牧場に行った。牧場には牛が沢山いたが、少し離れた所に馬もいて、人参を食べさせるイベントをやっていた。私も馬に人参をやる事になり、恐る恐る白い馬に近付いた。幼い私にはその馬は見上げるほど大きくて、恐ろしい顔をしており、正直怖かった。係りの人が、私の怯えをみてとり、
「馬は草食動物で、草しか食べないから大丈夫だよ」
と、私を励ましてくれた。私は、大人が大丈夫だよと言うのだから大丈夫だろう、と思い、人参を握りしめた手を目一杯上へ上げた。すると、馬はヌボーッと大きな顔を近付けて、思い切り
「パクッ」
と、私の手ごと、人参に噛みついた。それほど痛くはなかったが、私はショックだった。
「嘘つき」
と、心の中で呟いた。初めて本物の馬を見たのはこの時なのだが、不思議とトラウマにはならず、馬は大好きである。