「キャー」という奇声が出せない
子供の頃、近所に清美ちゃんという子がいた。よく一緒に遊んだのだが、ある時お人形さんごっこをして遊ぶことになった。私はお人形さんには興味はなかったのだが、清美ちゃんが好きだったので付き合う事にしたのである。
リカちゃん人形をお姫様に見立てて遊んでいたのだが、そのお姫様は悪党に襲われそうになり、
「キャー!助けて!!」
と奇声を発する事になっていた。清美ちゃんは実に見事に「キャー」という声を出せたのだが、私は出来なかった。どうやっても甲高い「キャー」という声が出ないのである。これは今でもそうである。
別に今はお人形さん遊びをする訳では無いのだから、「キャー」と言えなくても困らないだろう、と思われるだろうか?だが、これは危険な事なのである。例えば夜道で襲われそうになった時などに、大声で悲鳴をあげる事ができれば、誰かが気付いて助けてくれる確率も上がるだろう。
だからといって、今更「キャー」の訓練も出来んしなぁ、等と思うある雨の日であった。