人狼
若い頃は、沢山夢を見た。ある時、狼人間になる夢を見た。
満月の夜、荒野で月を眺めていると、遠くから狼の遠吠えが聞こえる。怖いけれど、狼の姿も見てみたい、と、じっとしていると、狼の群れがこちらへ向かって走って来た。
私の元に到着した群の中のリーダーと思われる狼が口をきいた。
「お前は我々の仲間だ。これから狩に行くから、変身して付いてこい」
そう言われても、どうやって変身すれば良いのか分からない。まごついていると、
「早くしろ。急いでいるのだから」
と、お叱りを受ける。取り敢えず服を脱ぎ、こんな感じかなー?とイメージすると、なんとか変身が始まった。
ところがである。変身は途中で終わってしまい、私は完全な狼の姿ではなく、半分狼で半分人間という不自然な姿になってしまったのである。
「ふむ。まあ良いだろう。よし、行くぞ!」
リーダーは走り出した。群れも彼の後に続く。私も慌てて走り出した。
狼達は四つ足だが、私は中途半端な人狼なので、二本足で後を付いていく。当然どんどん引き離され、
「待って。置いていかないでー。」
と心の中で叫びながら、必死で走った。
結局群れには追い付けず、最終的に荒野を独りさ迷っているところで目が覚めた。
どうせなら、もっと格好よく狼に変身する夢が見たかったのだが。